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NPO法人 日中健康科学会


by jchs
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講演要旨

    陸 小左教授 天津中医薬大学中医薬工程学院 学院長

 本講演は、鍼灸による病気の予防・治療、そして鍼灸における治療効果の評価という3つの面から、中医診断学と鍼灸の臨床との関係を論じる。まず体質の弁別による鍼灸の未病治という方法論を提示する。また、頭痛の診療を取り上げて、鍼灸の臨床における弁病・弁証と症状の弁別との統合的診断の有用性を紹介する。その上、客観的な検査より鍼灸の治療効果を判断する最近の試みを例挙してみる。

 中医学で言う体質とは、形態構造・心身状態ならびに疾病に対する反応などを含めた割りと安定でトータル的な生体の特徴を指している。生理学的な側面から、組織器官などの機能代謝と調節における個体差に表しているが、病理学的な側面では、生体の特定した環境に対する適応不良又は特定な病因に対する感受性の過敏、或いは特定な疾患に罹りやすい傾向性や発症してからの転帰の傾向性などに表すものである。

 「未病治」の概念は、『黄帝内経』の時代から登場して既に2千年以上の歴史を持っている。命を惜しみ、養生を重視し、病気を未然から防ぐ重要性を強調する「未病治」という理念は、中医学の理論的基盤の中に置かれており、また中医学的治療の崇高な目標として取り上げられている。この体質の弁別とそれに基づいた治療調節は、未病治における重要な方法と手段であり、鍼灸治療も体質調節にとって重要な役割を担っている主な方法の1つである。

 2009年4月、中国中医薬学会から《中医体質分類と判定》という基準を公表した。当該基準は、中国における初めての中医学的体質の研究と応用を指導して規格化したガイドラインである。中には、体質を平和質・気虚質・陽虚質・陰虚質・痰湿質・湿熱質・血瘀質・気憂質と特秉質との9種類に分類されている。筆者はそれに基づき、9種類の体質による鍼灸治療の取穴・手技に関するプランを創り出して応用している。

 また、中国では最近、弁病・弁証ならびに症状の弁別を統合するといった診断方法に関する研究は、中医学における脚光を浴びる重点的分野となっている。これは鍼灸の臨床にとっても重要な意義を持つ。ここに頭痛の診療を例とし、頭痛の部位による診断、痛みの特徴による診断、客観的な舌診による診断、主証と輔証との統合による診断など実用性の高い方法を説明する。その上、これらの診断を踏まえた基礎穴・弁証選穴・随証選穴ならびに部位別の加減穴という4つの治療選穴法を提示する。

 鍼灸治療効果における評価は多要因・多方面・多指標を構成する複雑なシステムである。もしこの評価システムが主観的要因の影響に左右されると、評価における一致性と科学性も保証できなくなる。治療効果の評価における目的は、治療効果を根拠とした治療技術に対する継続的評価によって、これから特定の患者および疾患に対してベストな治療法を提供するためである。また、この臨床効果に対する評価を通して、鍼灸医療者にとっても1つ積極的・支援的な環境の創り出しにも役立つと思われる。本文は鍼灸治療の効果を評価する場合に主観的指標と客観的指標との統合、定量的指標と定性的指標との統合、指標の客観化と規格化との統合、構成指標と割合指標との統合という4つの統合を唱え、鍼灸治療効果の評価は全体から、患者の主観的と客観的な所見に基づき、判断思考の一致性を保証する前提のもとで、多指標による総合的評価システムを構成し、様々なノイズを除外して真実・有効かつ便利な新型の評価方法を作り出すことに期している。

 中医学の診断技術は臨床治療のために応用するものである。患者の病態を正確な診断を下り、臨床効果に対して的確な評価を行うのは、医療従事者にとって最も合理的な治療方策の立案には役立つ。このため、中医診断学の技術は、鍼灸の臨床にとって非常に重要だと思われる。
# by jchs | 2010-03-09 21:04 | 交流空間

3月7日に開催されたシンポジウム「2010日中伝統医学の診断における最前線」において、講演の3演題の他に、下記の論文も論文集に編入され、その中の一部も会議中に発表されて討論されたのです。


中国代表団成員の交流論文
                             
 1.田元祥,他: 中医学診断の基準に関する研究の臨床的側面について 

 2.王憶勤: 中医四診の計測システムにおける研究開発の発想と方法について

3.陆小左,他: 脈象儀のセンサーに関する研究の現状とその展望

 4.湯偉昌: 脈象の客观的デジタル化に関する研究のその今後の展望

 5.曹宏梅,他: 三次元的中医脈象の情報計測装置に関するデザイン

6.何建成,他: 慢性うっ血性心不全の中医学的証スコアに関する開発と評価

7.王天芳,他: 更年期障害によくみられる「証素」に関する質問紙法の調査研究 

 8.趙燕,他: うつ患者のHAMDスコアと証素との相関性に関する分析      

9.王天芳,他: 疲労性半健康状態の証素に関する中医学的臨床研究    

10.薛暁琳,他: 半健康状態の中医薬的治療効果の評価システムに関する研究  

11.張啓明,他: 生体の代謝と気候の変化との動力学的特徴に関する研究    

12.彭锦: 新型インフルエンザの中医学的診療と予防に関する研究


日本からの問題提起

 高橋楊子: 舌診客観化研究についての私見――限局の黒苔1症例より  

 戴 昭宇: 中医学における痰の概念と痰・飲・水・湿の鑑別診断
# by jchs | 2010-03-08 03:31 | 交流空間


 3月7日に開催されたシンポジウム「2010日中伝統医学の診断における最前線」において、講演の3演題の他に、下記の論文が論文集に編入され、その中の一部会議中に発表され、討論されたのです。

 田元祥1,王天芳2,赵建新3

 1.中国中医科学院中医临床基础医学研究所,北京100700;
 2.北京中医药大学基础医学院中医诊断系,北京100029;
 3.河北医科大学中医学院,石家庄050091)

【日本語の要旨】

 中医学の証に関する診断基準は、中医診断学の基準研究において重要な内容と主な方向だと言えよう。これまでの証に関する中医学的診断基準の公表は、主に著作物の刊行に頼ってきたが、我々は中国国内の診断基準に関するデータベースを検索したところ、職業病・風土病・感染症関連の診断基準が多く見られるのは医療界全体の傾向であり、しかもこれは政府主導の行為だと分かってきた。

 今日までの中医学的診断基準の研究と公表においては種々の問題点があり、例えば専門性が強く、影響できる幅が狭い。用語が難解でまだ規格的ではない、社会における認知と普及が足りなく、国家基準として申請又は要請が少ない。中医学界では診断基準に対する開発意識がまだ弱く、発表と伝播のルートも少ない、などが枚挙できる。本稿にはその解決策について、特に臨床のニーズから検討を加えている。
# by jchs | 2010-03-07 23:53 | 交流空間

 3月7日に開催されたシンポジウム「2010日中伝統医学の診断における最前線」において、講演の3演題の他に、下記の論文が論文集に編入され、その中の一部会議中に発表され、討論されたのです。

 王忆勤 上海中医药大学

 中医学においては、診療用器械の開発が時代に要請されている。但し、これまでの中医学関連の診療設備の研究と開発では、中医学理論からの指導が足りなく、また臨床的実用性が足りない、低水準に止まってきたなどの問題点が存続している。

 これからの中医学的四診用診断器械又はシステムの開発は、四診を合わせて参照し、学際的な連携と融合を重視する、大量なサンプルに基づいたデーターベースを立てることを原則とすべきだと思われる。
# by jchs | 2010-03-07 21:58 | 交流空間

  天津中医药大学 陆小左 刘强 曹宏梅 胡广芹

  本稿は脈象儀の中で非常に重要な部分であるセンサーの開発について、国内外の研究情報を考察し、圧力式センサーや光電式センサー、液態センサーなど様々なセンサーの特徴について検討を行っている。
# by jchs | 2010-03-07 20:02 | 交流空間